タンブール刺繍とは?リュネビル刺繍との違いと、知られざる歴史

タンブ―ル刺繍、リュネビル刺繍、オートクチュール刺繍の違いを説明 コラム

皆さま、こんにちは。Éclat Noir です。
今回は、クロシェ刺繍の「タンブールワーク(刺繍・レース)」 について、歴史を整理しながらご紹介いたします。
刺繍の世界には、まだ知られざる奥深い歴史があります。今回は、その中でも特に魅力的な「タンブールワーク」を皆さんと一緒に探求していきましょう。

タンブ―ル刺繍、リュネビル刺繍、オートクチュール刺繍の違いコラム

1. タンブールワーク(刺繍・レース)の起源

「タンブール(Tambour)」とはフランス語で「太鼓」を意味します。
布を太鼓の皮のようにピンと張った枠に固定し、専用のかぎ針(クロシェ)でチェーンステッチを刺していく技法です。タンブ―ル刺繍・タンブ―ルレース・総称でタンブ―ルワークと呼ばれています。

この「タンブールワーク(刺繍・レース)」は、数千年前の中国をルーツに、更にインドや中央アジアの地域に伝わり、発展し、ヨーロッパに伝わった技法です。
かぎ針によるチェーンステッチ技法で刺す刺繍技法、編み技法を基軸としています。
基本はすべてチェーンステッチから成り立っているもので、時代と共に刺繍、レース編みの世界の中で様々な進化を続け現在に至ります。

2. リュネビル刺繍との関係

よく混同されがちな「リュネビル刺繍」との違いを整理してみましょう。

リュネビル刺繍 ※針の発祥の地名】 町の名前に由来するリュネビルクロシェ針(かぎ針)で作る白刺繍
 18世紀末、フランス東部ロレーヌ地方の町リュネビルで生まれた技法。
 白いチュールに白糸でチェーンステッチを施す「白刺繍(Point de Lunéville)」が始まり。
 レース状の白い刺繍をリュネビル刺繍と呼んでいました。(現在フランスの無形文化財指定)
※リュネビル刺繍と言うのは本来これです( ゚Д゚)

オートクチュール刺繍 ※スタイル技法】 パイエット(スパンコール)、ビーズをクロシェ針で刺繍し、パリのハイブランドで発展した刺繍 
 19世紀半ば、職人ルイ・フェリーがリュネビルクロシェ(かぎ針)をパリのオートクチュール界へ導入。
 スパンコールやビーズを高速で縫い留める方法を確立し、オートクチュール刺繍の世界を確立。
※現在ではこちらがリュネビル刺繍の通称になり、呼ばれるものになっています。

タンブール刺繍 ※地名ではない】 広い意味での呼び名 クロシェを使用した刺繍
 布を枠に張り、かぎ針(リュネビル針・アリワーク針(インド)・レース針で刺す刺繍技法全般の呼称。
※チェーンステッチでレースのような刺繍をタンブ―ル刺繍と言うのですが、こちらもリュネビル刺繍(オートクチュール刺繍と混同されるようになっています。
また、タンブ―ルを地名と書いているブログ等を見かけますが、タンブ―ルは地名ではありません。

現在のイメージはカテゴリで見るとこんな感じです。

【親カテゴリ】
 >タンブ―ル刺繍=タンブ―ルフック(かぎ針)でチェーンステッチで刺繍したもの
   【子カテゴリ】
    >リュネビル刺繍(オートクチュール刺繍)=リュネビル針のパイエット、ビーズ等を使用した刺繍
    >アリワーク刺繍 長いかぎ針に表からビーズ等を刺す刺繍

ちょっとややこしいです(*_*)
たくさん出版されているリュネビル刺繍、タンブ―ル刺繍などの手芸本はその作り手の解釈で呼び名や捉え方色々変わるので、なんだか定まらないものが多いのが現実です。

3. 世界に広がるタンブール刺繍

アジアから広まったタンブール技法のチェーンステッチは、各地で様々な形で発展し、繊細なビーズ刺繍や金糸刺繍に応用されるようにもなりました。
またヨーロッパでは貴族や上流階級の女性たちの間で広く楽しまれ、刺繍は貴婦人のたしなみとされるようになりました。

特に日本人にとっての注目は、刺繍家 「Yusai Fukuyama」氏 の存在です。
彼は米国の出版社から1987年『Tambour Work』を出版し、タンブール刺繍を体系的に解説。
その著作は「最も徹底したタンブールの研究書」と評され、タンブ―ル刺繍・レース文化をとても丁寧に説明された方で他にもボビンレースの良書を多数出版されています。同じルーツを持つ作家さんとして非常に魅力を感じた一冊です。
貴婦人が刺繍をしている表紙がおしゃれです。

4. 現代に受け継がれるタンブール刺繍

2020年には「リュネビル刺繍( Le Point de Lunéville) 」がフランス無形文化遺産に登録され、世界的に再評価されています。
あの目を見張る繊細なリュネビル刺繍レース、学校に沢山展示されています。
ご興味あればこちらの学校のリンク(フランス語です)からご覧ください。

リュネビルの刺繍学校で学んだ由緒あるリュネビル刺繍は無形文化遺産です。画像等も門外不出ですので、作品を教室でご覧いただく事は出来ますが、工程を広める事ができません。白一色で描かれる繊細な世界は、過剰な装飾に頼らず、純粋に針と糸が奏でる美を堪能できるものです。本当に美しいとしか言いようのない刺繍です。

結びに

タンブール刺繍は「道具に由来する技法」、リュネビル刺繍は「地名に由来する白刺繍」、オートクチュール刺繍は「パリのメゾンで花開いた総合芸術」。
それぞれの出自は異なりながらも、現代においては互いに重なり合い、唯一無二の刺繍文化を築き上げています。

あなたの一針一針もまた、この長い歴史の続きを紡ぐもの。
ぜひ、Éclat Noir でその世界に触れてみませんか?

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Éclat Noir では、初心者から経験者まで楽しめるカリキュラムをご用意しています。
タンブ―ル刺繍の源流に立ち返り、チュールと白糸を使い、チェーンステッチで仕上げる純粋なタンブール白刺繍のデザインをカリキュラム化しました。作品によってはビーズやスパンコールを使った華やかな作品まで、幅広い作品を楽しくお作りしていただけます。

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★リュネビル刺繍の解説・歴史についてはこちらの記事★

リュネビル城・リュネビル刺繍学校

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